2026/05/19 07:10


父が見たかった景色へ


私の家は、

昔から市場出荷ではなく、

買い取り業者への卸が中心だった。


祖父も、父も、

そうしてきた。


今でこそ、りんごは高値で取引されることもある。


でも昔は違った。


どんなに品質の良いりんごでも、

安い価格で取引されていた時代があった。


父は、

そんな時代を生きた人だった。


必死に働き、

私を育ててくれた。


あの年、

畑で丸かじりしたりんご。


その一口が、

私の考えを変えたのかもしれない。


「このりんごを、自分の手で届けたい」


市場だけではなく、

自分の店で、全国へ。


そう思った。


それから15年。


一つの夢を叶えた。


でも同時に、

新しい夢が生まれた。


次は――


父が見たかった景色を、

私がつくる。


そう思いながら、

今日も畑に立っている。